セクハラ対策センター

判例紹介

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判例① 会社の債務不履行責任認定

セクハラ相談への会社対応が不十分だったため債務不履行責任が認められた事例
京都セクハラ事件(京都地裁 平成9年4月17日)

事案の概要

被告会社の社員は、ビデオカメラで女子更衣室を密かに撮影していた。これに対し、被告会社は、カメラの向きを逆さにするにとどまったため、再び同様の撮影が続けられた。最終的に会社は、この社員を懲戒解雇とした。原告は、この件以来、会社の雰囲気が悪くなったと感じており、朝礼の場で会社を好きになれないと発言をした。被告専務は、翌日の朝礼において、原告がカメラを設置した社員と男女関係にあるかのような発言をし、原告に勤務を続けるかどうか一日休んで考えてくるように発言した。これ以降、同僚が原告を避けるようになり、原告は職場にいづらくなり退職した。被害者は、社長・専務・会社を相手取って、557万3,879円(逸失利益 207万3,879円=賃金と失業給付との差額469日分、慰謝料 300万円、弁護士費用 50万円)、また、会社に対し別途、64万5,000円(不当利得・退職金残金)を請求した。

判決の要旨

会社に対して、慰謝料214万円が認容専務に対して、194万5,945円認容(逸失利益 79万5,945円=180日分、慰謝料100万円、弁護士費用 15万円)。被告専務は、不用意な発言を差し控え、また、撤回し、謝罪するなどの義務があるにもかかわらず、発言により原告の退職を招いており、損害賠償責任を負う。会社には、労働者との契約上、労働者のプライバシーが侵害されないよう、また労働者が意に反して退職することがないように職場環境を整備する義務があるにもかかわらず、これを怠ったとし、損害賠償責任を認めた。また、ビデオの撮影に対して何の措置も執らず、再び撮影される状態を招いており、債務不履行による損害賠償責任を負う。さらに、取締役である被告専務の発言につき損害を賠償する責任を負い、さらに、専務の発言に対して何の措置もとらなかったため、原告は退職しているから、会社は原告の退職による損害を賠償する責めを負う。ただし、代表取締役個人に対する請求は棄却された。

判例② 「妊娠降格は違法」最高裁、マタハラ訴訟で初の判断

マタハラ降格に賠償命令、女性が逆転勝訴した事例
 広島マタハラ事件(平成27年11月17日)

事案の概要

女性従業員は、妊娠前、患者の自宅を訪問してリハビリをする、訪問リハビリ業務に従事しており、訪問リハビリチームの副主任として、副主任手当の支給を受けていた。

女性従業員は、妊娠を機に、訪問リハビリ業務よりも病院内でのリハビリ業務の方が身体的負担が軽いと考え、病院内でのリハビリ業務への配置換えを希望した。病院側も女性従業員の配置換えの希望を承諾し、病院内でのリハビリ業務に配置換えした。その後、病院側は、女性従業員に対して、配置換えにより副主任から降格になることを伝えることを忘れていたなどと説明し、しぶしぶながらも女性従業員の了解を得て、副主任から降格させた。女性従業員は、出産後、産休・育休を終えて復職したが、病院は復職後も女性従業員を副主任に復帰させなかった。これらに対して、女性従業員が、妊娠に伴う配置換えを契機に降格させたことは違法であるとして、病院側に損害賠償等を請求した。

判決の要旨

高等裁判所は、降格は適法として女性従業員を敗訴させたが、最高裁判所は、「妊娠中の軽易な業務への転換を契機として女性従業員を降格させる事業主の措置は、原則として違法である」として、この判決を破棄し、再度審理を尽くさせるために事件を高等裁判所へ差し戻した。最高裁判所は、事業主の措置は原則として違法であるとしたうえで、例外的に以下の2つの場合に限り適法であるとした。

 

(1)当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき。

(2)降格の措置をとることなく軽易業務への転換をさせることに支障がある場合であって、降格の措置をとることが、妊娠を理由とする不利益取り扱いを禁止した法律の趣旨に反しない特段の事情が存在するとき。

 

そのうえで、最高裁判所は、本件について、以下の(ア)、(イ)の2点を指摘した。

 

(ア)降格により、女性従業員は管理職としての地位を失い、管理職手当の支給がなくなるという重大な不利益があること。

(イ)女性従業員は、降格後の待遇について十分な説明を受けておらず、育児休暇からの復帰後も副主任には復帰できないことも告げられないまま、しぶしぶ承諾したに過ぎないこと。

 

そして本件では、女性従業員が降格について一応同意しているが、上記(ア)、(イ)の事情からすると、前記(1)の「自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する」とは言えず、女性従業員の同意を根拠に降格を適法とすることはできないと結論づけ、提訴は一審、二審を覆して最高裁で逆転勝訴した。

判例③ パワハラが自殺との間に相当因果関係有りとして、高額の損害賠償

暴力、暴言により強いストレスを受け、自殺が発生してしまった事例
 メイコウアドヴァンス事件(名古屋地裁 平成26年1月15日)

事案の概要

金属ほうろう加工業を営む会社(被告)の従業員が、会社役員2名から日常的な暴行やパワーハラスメント、退職勧奨等を受けたことが原因で自殺したとして、当該従業員の遺族である妻子が会社及び会社役員2名に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条、715条、会社法350条)訴訟を提起した事案。

本判決は、会社役員1名によるパワハラ、暴行、退職強要等の不法行為と従業員の死亡との間に相当因果関係があったことを認め、被告会社及び会社役員1名に対し、合計5400万円余りの損害賠償を命じた。

判決の要旨

(1)暴言、暴行、退職勧奨のパワハラについて

本判決は、会社役員のうち1名(代表者)につき、以下の事実があったと認定し、①から④の暴言や暴行は仕事上のミスに対する叱責の粋を超えて死亡した従業員を威迫し、激しい不安に陥れるものであって不法行為に該当する、⑤の退職強要についても不法行為に該当すると判断した。

 

①死亡した従業員が仕事上のミスをした際「てめえ、何やってんだ」「どうしてくれるんだ」「ばかやろう」などと汚い言葉を大声で怒鳴り、あわせて同人の頭を叩く、同人を殴る、蹴るなどしたことが複数回あった。

 

②死亡した従業員ほか1名の従業員に対し、同人らがミスによって被告会社に与えた損害を弁償するよう求め、弁償しないのであれば家族に払ってもらうと述べた。

 

③死亡した従業員ほか1名の従業員に対し、「会社を辞めたければ7000万円払え。払わないと辞めさせない。」と述べた。

 

④死亡した従業員の大腿部後面を二回蹴り、全治約12日間を要する両大腿部挫傷の傷害を負わせた。

 

⑤死亡した従業員に対し、退職願を書くよう強要し、同人は退職届を下書きした。その下書きには「私(死亡した従業員名)は会社に今までにたくさんの物を壊してしまい損害を与えてしまいました。会社に利益を上げるどころか、逆に余分な出費を重ねてしまい迷惑をお掛けした事を深く反省し、一族で誠意をもって返さいします。二ケ月以内に返さいします。」と記載され、「額は一千万~一億」と鉛筆で書かれ、消された跡があった。

 

(2)自殺とパワハラとの因果関係について

死亡した従業員は、生前「この仕事に向いていないのかな。昔はこんな風じゃなかったのに。」などと口にしたり、日曜の夜になると「明日からまた仕事か。」と言って憂鬱な表情を見せるようになったりしていたところ、このような発言の時期と、代表者の暴言、暴行の時期とが符合しており、さらに自殺の7日前に④の暴行が行われたこと、自殺3日前に⑤の退職強要があったこと、これらのハラスメントはいずれも死亡した従業員に強い心理的負荷を与えたといえることから、自殺とパワハラとの因果関係が認められた。

 

(3)損害賠償について

判決は、被告会社及び代表者に対し、死亡した従業員が生きていたならば得られたであろう収入相当額(逸失利益)、慰謝料などの合計5400万円余りの損害賠償を命じた。

判例④ 増加傾向にある企業のコンプライアンス違反

粉飾決算の事例

2015年度のコンプライアンス違反は289件判明。前年度比3割増で過去最多を更新し、5年連続で前年度比を増加している。違反類型では「粉飾」が85件で最多!資金流出や詐欺などの「資金使途不正」は67件判明し、前年度から4倍にも大幅増加している。ことに、企業を倒産や廃業にまで至らせる「粉飾決算」では、過去の事例でも記憶に残る大きな事件が数多くある。

企業の「粉飾決算」に見る、過去のコンプライアンス違反事例粉飾決算の事例

■増収増益を粉飾し、社長逮捕で連日ニュースを賑わせたIT企業L社

企業の代表でもあった被告や元取締役らが、2004年9月期の連結決算で自社株売却益や架空利益を違法に計上し約3億円の経常赤字を約50億円の黒字に粉飾した有価証券報告書を関東財務局に提出、子会社の買収をめぐり虚偽情報を公表したとして、東京地検特捜部が06年、同法違反(有価証券報告書の虚偽記載、偽計・風説の流布)罪で計7人を起訴した事件。

 

■粉飾決算を行い巨額の負債を抱え、自主廃業した証券会社Y

日本の4大証券会社の一角にあったが、不正会計(損失隠し)事件後の経営破綻により、戦後最大の負債総額3兆円を抱え1997年に自主廃業した。業績不振の債務を簿外債務として子会社に移すことで、決算の度に隠蔽するという粉飾決算を行った。その他不正な利益供与などの疑いや多数の要因も重なり破綻へと繋がった。

 

■長期にわたって損益を隠し続け、負債を粉飾決算で処理したO社

1990年代の財テク失敗で抱えた約1千億円の損失を、「飛ばし」という手法で、損益を10年以上の長期にわたって隠し続けた末に、負債を粉飾決算で処理した事件。経営トップによる処理及び隠蔽、巧妙な隠蔽手段などが大きな問題となった。買収資金の不透明さを指摘した元社長の解任騒動をきっかけに発覚した。

★上記以外にコンプラ違反の事件として小さなものから大きなものまで多種多様ですが、ほんの小さな事が企業にとっては倒産になりかねない問題なのがコンプライアンス違反なのです。

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